==============
木札への筆耕について
==============
「木札への筆耕を依頼されたがどうすればいいか?」そのような内容の質問があったので、こちらでシェアします。
木札は木の質にもよりますが、墨が滲んだり弾いたりすることがあります。普通の洋紙のように綺麗に書くことが難しいということです。
対策は極シンプルで、開明の「木簡墨」という墨汁を使用します。布専用の「帛書墨」や「ポスターカラー」でも代用できるでしょう。100点満点の仕上がりは難しいかもしれませんが、80点くらいの仕上がりは期待できます。
ただし筆は傷めますので、そこは覚悟しましょう。使い古した筆を使用すれば、ショックは少ないでしょう。
昔は砥の粉で下地を作る方法、にじみ防止スプレーを吹く方法、チョークの粉を塗る方法などもありましたが、今は専用墨汁の性能が高くなったので、必要ないと思います。木札自体へのダメージの恐れもありますので推奨しません。
木札への揮毫ですが、一発で書けるならそれでOKです。ただ、不安であれば割り付けして、必要であれば下書きしても構いません。
2B以上の柔らかい鉛筆で薄く書いてしまいましょう。その上に墨が乗れば目立ちませんし、もし鉛筆の跡が残っても消しゴムで消せます。※強く書いてはダメですよ。
消しゴムをかけるコツは、ゴシゴシ擦らないで、上からトントンと叩くようにすることです。少し時間はかかっても綺麗に消せます。
消しゴムをかける時は、しっかり墨が乾いたのを確認しましょう。これも当たり前のようですが、油断すると「ひえ〜」となります。
以上、木札への筆耕について解説しました。もし、依頼があっても落ち着いて対応しましょう。
==============
筆耕に使用する小筆について
==============
実用書道にとって最も大切とも言える道具が「小筆」です。今回は小筆についての解説と現状をご紹介します。
まずは筆耕で使用する小筆です。テキストのP12を見て下さい。ここに4本の写真が掲載されています。イメージとしてこれらのタイプを想像してください。
選ぶ際ですが、穂先を最優先に考えます。穂先の長さや太さです。これらは書いているうちに自分の好みがわかってきます。色々と試してみましょう。
柄は長短・太細色々ありますが、これも好みです。僕個人としては全く気にしていません。握りが太くても細くても関係ないです。
以前ブログに書いた小筆の記事ですので参考にしてください。
https://ameblo.jp/syo-do-work/entry-12777388439.html
次に小筆の現状です。まず、小筆は年々値上がりしています。たとえば、標準的な「選毫円健(中字)」ですが、数年前は700円前後で購入できましたが、現在は1200円以上します。
※「選毫円健(中字)」は初心者にもおすすめな標準的な筆です。
円安の影響もあるでしょうが、そもそも動物の毛の取引が世界規模で規制されているので仕方がありません。この流れはもっと加速しそうです。
豊橋筆の職人さんにリクエストして作っていただいたこともあったのですが、納得できる筆とはなりませんでした。見た目はいいのですが、毛の質が明らかに落ちてきているのです。
話を聞いてみると、どうやら高品質のイタチの毛はほとんど入手できないようで、質のいい筆の入手は年々難しくなりそうです。
数年後には動物の毛の筆は無くなって、ナイロンの筆に変わっているのでしょうね。僕としては性能が変わらなければそちらの方が歓迎ではあります。
ちょっと暗い話になってしまいましたが、書道用品店に行ったら、その辺も頭に入れて購入してください。右も左もわからない時は「選毫円健(中字)」を選ぶか、店員さんに相談してみましょう。
========
筆順について
========
漢字もひらがなも正しい筆順(書き順)というものがあります。この筆順ですが、「字形が美しく見えるため」「漢字の成り立ちより」「これまでの習慣」など色々な理由で決められています。
では、「正しい筆順で書く必要があるのか?」となりますが、答えは「神経質になる必要はない」となります。
ただし、書道を習っている今の立場であれば正しい筆順を知っておいてください。「正しい筆順はこうだけど、あえて変えて書いている」のであれば、正しい筆順以外で書いても構いません。
また、漢字によっては筆順が2種類・3種類あることも珍しくありません。可能であれば複数覚えてしまいましょう。
さきほど「神経質になる必要はない」と書きましたが、僕としては正しい筆順は重要だと思っています。なぜなら、正しい筆順を知らないと、行書が書けないからです。
行書は点画を繋げたり、省略することが多いのですが、正しい筆順を知らないとそれができないのです。
いずれ行書も学びたいとお考えなら、いまから少しづつ筆順を学んでおきましょう。
筆順を学ぶと言っても、常用漢字2136文字を一気におぼえろ、ということではありません。賞状や細字の課題を書いていて「あれ?」と思ったら、その都度チェックすればいいだけのことです。
今はスマホに筆順のアプリがありますので、普段はこれでOK。もし、これから書道のプロになるのであれば、筆順辞典を1冊は持っておきましょう。
(おまけ)
========
筆順を間違いやすい字
========
「あれ?」と思ったら調べてみましょう。
右・左・有・希・必・万・区・長・書・冊・進・華・状・世・可・も・モ・ヲ
※賞状筆耕プロコースの「感」は心を先に書いているのですが、複数ある筆順の一つになります。標準では後に書きます。